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組織開発研究会

企業のトリビア募集

環境学習、知識学習そして感情学習へ

 リチャード・バレットのモデルは組織開発において感情学習を軸にしたものであり、注目に値する。

1998年であり、、学習する組織の8年後である。規範理論の範疇に入る。彼は企業(組織)及び個人も同様に、公共性へ向かうべきであり、それが成長であるという信念をもって提案している。Liberating the Corporate Soul : Building a Visionary Organization (1998)

 彼は組織開発を軽視した取り組みについて言及している。1994年の調査である。リエンジニアリングを先駆けて行った99の組織のうち、3分の2の組織が生産力は平凡、売上は限界収益点ぎりぎりか倒産と判断された。失敗の主な原因の一つは人間的な側面の配慮が欠けていたことだ。(中略)ダウンサイジングを行った企業のうち営業利益が短期あるいは長期で増加した企業は半数以下であり、早期に生産性を上げた企業が3分の1以下である。士気は72%の企業で急速に落ち込んだ。(注)トーマス・ダベンポートの論文を基にしている。Fast Company Magazine の`Premiere  Issue,  Why Re-engineering Failed, 1995年(Thomas H. Davenport)

 

 彼の主な主張及び論点は次のようなものである。

・    組織の情緒の健全性とは、自分自身をどれだけ感じられるかということと、他者との関係性の質で定義される。「組織の適性(生産性、効率、品質)」と「人間関係」が、情緒の健全性を測定する指標である。従業員の強い友情、同僚や上司との結びつき。責任ある自由、仕事へのプライド、平等などである。これは生産性に関するものである。

・    組織の意識の健全性とは、組織の外と内、双方からの開放性に直結する。外とは外部環境からの学習であり製品やサービスの改良などである。内とは組織文化中心の学習(変革)である。外部での達成は企業の自尊心や士気を高め、内部での成長は創造性を高める。創造性を養うことは知識を養うことより重要である。これは創造性に関するものである。

・    企業の多くは身体面(財務的)健全性、情緒面(生産性)のニーズを満たすことだけを考える。意識面へのニーズを満たすものもあるが、殆どは達成の為の学習に集中し、内的成長への自己認識、自己革新へは向かわない。

・    企業の変革は、リーダーシップの価値と行動を変革することから始まる。企業が変革するのではない。人間が変革するのである。

・    マネジメント理論は組織が学習することに置かれ始めている。これは組織が外部環境に学ぶことから、組織の内部環境に学ぶことへの移行に起こる。自分自身について学び始めると、感情への道が開ける。顧客のニーズ、市場、競争などに学ぶことは重要だが、革新性や創造性、生産性を阻害する組織内部の文化的問題の解決については役に立たない。人と組織が発展するのは、自らの魂を遠ざけているような感情的な問題に、積極的に立ち向かった場合においてだけ。個人或いは組織レベルでの自己認知こそが、進化と成長への唯一の道である。

 

 リチャード・バレットの根底概念は、組織を生命体であるとする考え方である。彼は、人や組織が公共性を考えると、「信頼」「正直さ」「自愛」「共有」といった価値観が大切であり、それは(組織は)生命体であると定義している。

 また、特に優れた企業に共通している8項目についても紹介している(バランスよく価値観を固定化させていく、文化とシステムがリンケージしている、機能的に協働がなされている、決して満足しないなど)。~The 8 Practices of Exceptional Companies 」1997年(ジャック.フィッツ.エンツ)からの紹介である。~

 

 また、リチャード・バレットのモデルは、エリク・H・エリクソンの8つの発達課題を連想させるモデルである。組織も含め、公益性へ移行しているのは21世型モデルに相応しいといえる。

 自分の存在、組織の存在を深く掘り下げていくことで、個人そして組織は公益性へ変換していくべきであるというものである。マイケル・ポーターのCSV(Creating Shared Value共通価値の戦略)を予感させるものである。

 組織開発は、個人、組織、社会が相互に影響を受け、バランスをとりながら価値観を進化させていくモデルへと展開されているといえる。

 

 組織開発は、人と社会の幸福を模索していく中で、経済性優先の経営に対して何度も何度も経済性重視にチャレンジしてきた歴史のように思える。

 本来エクセレントな企業とは、社会性と経済性の同時達成を追求している組織体ではないのか。戦略の変遷を見てもその潮流を感じる。外部環境から戦略を学ぶことはできるが、変革や創造というのは内なるものの力である。組織開発はその両方を統合的に融合させながら取り組むマネジメントなのである。

 

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