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組織開発研究会

組織文化診断

組織文化診断5つの示唆(1)

 組織文化診断で何がわかるのかといった意見はあるだろう。組織文化診断は方法であるので、目的が不明確であれば役に立たない。また、方法であるのでやり方の上手さ下手さで大きく効果も異なる。処方も間違えば逆効果になることもある。組織文化診断も同様である。

 

組織文化診断は「示唆」してくれるものである。主に次の5つを示唆してくれる。

 

(1)推進の方法を示唆してくれる

  • 戦略のテーマそのものを示唆するものではないが、その戦略テーマをどのように展開すれば上手くいくのかを示唆してくれる。例えば、営業部門は大体において分散体質を有している。製薬会社のMRなども同様だろう。担当している顧客にしか興味がない。隣のエリアで隣の商品部で何をやっているのか興味はない。極端にいえば、隣に座っている人にも興味はない。属人的なのである。それは問題だ、情報やノウハウをシェアリングしようとしてナレッジマネジメントや業務計画などのグループウェアを導入したとしてうまくいくだろうか。そもそも隣に興味がないので自分に必要な情報をインプットするだけである。データ量が少ないといってインプットをルール化し、管理強化を行えば、この忙しい時に余計な仕事を増やしたと逆効果になる。しかし、経験共有は創造性を生み出す源泉にもなる。温泉にでも一緒に行って苦労話でもした方が効果的かもしれない。どうしたら自主的にデータを入れたくなるのか、無意識のうちにデータを入れたくなるのか、それはどのような行動様式と深く関わっているのかを示唆してくれるのである。
  •  例えば、「当社の戦略は魅力的である」に対して「そう思う」率が30%だとする。一方で「あなたは自分の責任を十分に果たしている」の「そう思う」率が80%とする。この場合、中期経営計画を刷新しても戦略の意図は伝わっていないので実行されない可能性が高い。中期経営計画の策定プロセスに現場を巻き込むプロセスをデザインすることの方が、目標管理を行うよりよっぽど効果的かもしれない。

 

 

 

 

 

組織文化診断5つの示唆(2)

(2)  押すべき行動様式を示唆してくれる

  • 例えば、「あなたは上司の積極的姿勢に刺激される」という設問と、「あなたは自分の役割を部門戦略の中で明確に位置づけることができる」という設問の相関係数が高かったとする。だとすれば、上司が積極的な行動をとることで役割意識を高めることができるのではないか、という切り口を発見することができる。何故そのような結果になったのかは、過去の歴史が物語るはずだ。上司がどうような場面で何度も同じ指示を繰り返したのか、上司が自ら行動したことは何か、上司が決して口にしないことは何か、上司が怒る場面はどのような場面なのか、あなたが上司を見て刺激された場面を振り返ってみるということである。部門戦略を意識させ、役割を意識させる口癖などがあるはずだ。下手にリーダーシップや役割などに関する研修などやらなくてよい。どのような行動様式をDNAとして残すべきかを記録し、共有することである。また、その逆を内省するのもよい。新任管理職研修などで伝えるべきことはそういう内容である。
  • 例えば、「PDCAは十分に機能している」「プロジェクトや課題は最後までやりきる職場風土だ」の「そう思う」率が10%とする。「部門の目標は明確である」「部門の目標を理解している」の「そう思う」率は90%であるとする。「職場の業務計画と実績の対比はきちんと行われている」の「そう思う」率が10%で、前の4つの設問との相関が高い(例えば、0.4)と仮定する。この場合、目標の理解はしっかりしているから、結果報告をしっかりやらせるような取り組みをやろうとすると、逆効果になりかねない。目標はやることを理解することではなく、実行するための活動時間の計画を理解しているかに変更した方がよい。計画と実績は結果や内容の議論ではなく、先ず決めたアクティビティが決めた投資時間通りにできているかをオープンにするだけでよい。報告など必要ない、という仮説が出てくる。押すべき行動様式は業務計画の実績対比であり、明確にすべきは、アクティビティとアクティビティごとの投資時間の見える化である。

 

 

 

 

 

 

 

 

組織文化診断5つの示唆(3)

(3) 可能性を示唆してくれる

  • 組織文化診断で定点観測をしているとする。「当社の商品ラインナップは充実してきた」という設問に対して、「そう思う」率が毎年高まってきたとする。それは、販社のM&Aを実施しても大丈夫であることを示唆しているのかもしれない。
  • 新たな中期経営計画を発表した。「あなたは中期経営計画における自分の役割と目標をいえる」という設問に対して「そう思う」率が30%と仮定する。残念だが、言えないということは意識している状態ではないので、日常の行動に反映されず、従来の行動を繰り返すだけになり、既存延長線上のテーマはある程度クリアするかもしれないが、新たな戦略テーマは実現されないだろう。
  • 「あなたは上のポジションに就いてでもやりたいことがある」という設問に対して、30歳代の「そう思う」率が20%だったとする。これは事業に対して主体的でなく、課題の解決はできても課題の設定はできないことを示唆している。しかし、それ自体を問題視してはいけない。現状、ルーティンを一生懸命こなすことに集中している状態があるのかもしれない。また、新たな役割やポジションを与えられて初めて育つという歴史を持っているのかもしれない。そのように考えると、この組織は常に戦略的テーマの設定、戦略的プロジェクトの発足そして戦略的ローテーションが成長の原動力である可能性がある。景気などにより業績が落ち込み、縮小均衡的な方向性へ動いた場合、この組織のDNAは薄れ、成長のエンジンを失う可能性がある。(売上は落ちてもコストダウンで利益率を維持してきた歴史を持つ組織は異なる戦略をとるかもしれない。)

 

 

 

 

 

 

組織文化診断5つの示唆(4)

(4)  関係性を示唆してくれる

  • 例えば、「当社には改善活動が浸透している」という設問の「そう思う」率が90%とする。一方で「当社の生産性はこの5年間で高まっている」の「そう思う」率が20%とする。この場合、改善活動と生産性向上が現場では繋がっていないことを示唆している。成果の収穫の仕組みがないことが原因かもしれない。また、設問間相関で検証することもできる。
  • 組織文化診断では、組織開発理論から設問の主語が「あなたは~」「職場は~」「当社は~」の3つに分かれる。個人とチームそして全社での現状とあるべき姿のギャップをみるためである。一般的な傾向として「あなたは~」設問の「そう思う」率が高く(肯定的回答)、「当社は~」設問の「そう思う」率が低い場合、業績が上向かないことが多い。(注:通常、どの組織でも個人の肯定は高く全社の肯定は低い。そのギャップが想定以上に開いている場合をここではいう)
  • 例えば、戦略系の設問と役割と責任に関する設問の相関が高い一方で、人材育成やスキルに関する設問との相関が低いとする。この場合、人材育成やキャリア形成を意識できるプロセスを事業計画やプロジェクト組織などに反映させていく工夫などが必要ではないか、という仮説が出てくる。

 

 

組織文化診断5つの示唆(5)

(5) 問題の大きさを示唆してくれる

  • 例えば、戦略や事業計画に関する設問に対し、管理職層の理解度は70%だとする。担当者層が30%だとする。通常、戦略系の設問において、管理職層と担当者層では乖離があって自然であるが、戦略系以外の設問におけるギャップが殆どないとすれば、戦略や事業計画におけるギャップは不健全であり、構造的問題があると推察される。構造的な問題というのは小手先の改善では駄目だということを示唆している。
  • 例えば、コンプライアンスやハラスメントに関し会社として相談窓口や相談サイトを設けていたとする。社員の殆どがその存在を具体的に知っているとすれば、ハザードは小さいと予測することができる。
  • 通常、全社の中で、品質保証部や品質管理部の「そう思う」率は他の部門と比較して低い。業績や戦略に関わらずやるべきことは決まっている、ということを示唆している。しかし近年、業績に関する設問において、「そう思う」率の変動が大きくなっている。これは、部品の共用化や一社購買の動きにともない、リコールなどへの損害賠償責任が大きくなっていることを示しているものと考えられる。品質関係の部門における、生産性や人材構成など、僅かな変化も注視してとらえた方が良い。普段ものをあまり言わない者が、気を付けた方が良いというシグナルを発した場合、数値以上のシグナルであると思った方がよい。

 

 

 健康診断でも同様であるが、数値だけを見て判断してはいけない。事業特性や業務特性、歴史など踏まえた上でその数値の意味を解釈しなくてはならない。その意味では、組織文化診断というアンケートだけでは不十分で、歴史や事業特性などインタビューなどによって事業特性など理解し、仮説を持った上で組織文化診断は行われるべきものである。

 

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組織文化診断のフレームワーク

組織文化診断のフレームワークは図のようになっております。

外的形成要因と内的形成要因を起点としております。これは戦略のフレームワークでも同様です。この2つから組織文化を形成する7つの要素を設定し、そこから文化を評価・測定する視点としての12のドライバー、更に文化を具体的に問う行動様式群として36のリクワイアメントを設定しました。36のリクワイアメントに対して、各3つの設問を設定し、計108の設問から構成されるプログラムです。

36のリクワイアメント

組織文化を構成するフレームワークを外的形成要因3つ、内的形成要因4つとした。このフレームワークのグリッドから12のドライバー(組織文化に影響を与える12の要素)を設定した。更に、12のドライバーをそれぞれ3つの要素に分解し、36のリクワイアメント(組織文化診断を行う上で必要とされる36の要素=組織文化診断の要求事項)とした。

資料のダウンロード:12Driver&36Requirement

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