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組織開発研究会

企業のトリビア募集

学習する組織

戦略、学習する組織、感情学習、組織形態という側面から組織開発との関係性についてみてみる。

 ピーター・センゲが著書The Fifth Discipline(1990年)の中でラーニング・オーガナイゼーションを紹介してほぼ20年が経過する。複雑な環境に対応するためには、企業はよりラーニングフルにならなければならないとして5つの学習領域を提案している。①システム思考、②共有ビジョン、③チーム学習、④メンタルモデル、⑤自己実現である。組織開発そのものである。

 システム思考の発想は、組織開発においてそれがオープンシステムである状態を構造化する手法ともいえる。しかし、組織開発の場合は、8つのシステム原型のように、パターン化されるとは限らない。組織は人と同様に全く同じということはないからである。環境、戦略、組織、業務、モチベーションなど多面において影響し合うもので、それは組織の歴史や規模などでも変わってくる。仮に変化するとしても、当該企業の中にあっては、傾向を構造化するシステム思考は有効である。

 重要なことは相互に影響し合う重要と思える事象または要素をシステムとして関係を構造化することなのである。

 

 共有ビジョンで重要なことは、トップマネジメントが提示することだけではなく、その作成プロセスに組織構成員が参画することによって目的や目標に対してどれだけコミットメントできるかという点である。

 自律性を重視するということは、まずは個人がどのようなビジョンに価値があるのかを考え、それをチームそして組織として意味や価値を共有化することである。

 また、共有化できる環境、仕組み、ネットワークを組織が提供しなくてはならない。

 組織開発においては、参画型で“あるべき”というのは、先述のリッカートの規範論的モデルと同様である。その意味では、どうあるべきかという方向性を啓蒙的に提示するアンケートやサーベイはマネジメントツールの一つとして効果的であるといえる。例えば、「あなたは、部門の戦略目標を作成する過程において、意見を求められましたか、或いはチームでディスカッションをしましたか?」といった設問である。

 組織開発として具体的な対策を講じていくには、組織特性などシステム全体を考慮に入れて検討しなくてはならない。例えば、起業まもない単純組織型の場合、強いトップがある程度強制力を持って組織を牽引する必要があるため、組織メンバーの参画度合は小さくなることがある。よって、参画度合が低い、環境がないからといって一概に高めるという方策にはいかない。規範的モデルがよくないという意味ではない。その組織の歴史、事業特性などを考慮に入れて、何故そうのような結果になったのかを理解することである。そして、今後どうあるべきか、あるべき姿とのギャップをみていくことが重要なのだ。

 

 メンタルモデルは常識や思い込みを変えていくこと、新しい行動を生み出すものである。その中心となるスキルが内省と探究である。内省は自らのメンタルモデルの形成過程を明らかにする。探究とは他者との語り合いの中から互いの考え方の前提を知ることである。これは行動科学のアプローチである。

 日本の企業組織の中でメンタルモデルを実践することは容易ではないだろう。文化的に、語る類のものではないと思っている人も多いと思われる。学習する組織でいう《推論のはしご》と《左側の台詞》である。何故そう感じたのか、何故そのように結論づけたのか、思考と推論のプロセスを見えるようにすることで違いと共通点を見出すこと、行動の選択基準となっている価値観を相互に理解することである。

 この取組みは、組織開発において重要な取り組みである。組織開発では、戦略や組織、マネジメントシステムそして事業特性などとの関係の中で何故そのように認識しているのかを明らかにしようとする。よって、自分が何故そのような思考プロセスを踏んだのかが気づき易くなる。また、客観的に示唆するので、メンタルブロックも低く、議論もし易い。内省を手助けするものである。

 そもそも組織文化というのは無意識の行動習慣であるので、気づくこと自体が困難であり課題でもある。それをどのように気づかせ、行動を変革させていくのかのヒントを見つけ出すのも組織開発の役割である。

 ただし、直観とは異なるものであり、メンタルモデルが新たなアイデアを生み出すとは限らないので、創造性と混同してはいけない。或いは過剰期待してはいけない。

 

 チーム学習はチーム・ビルディングと異なり、メンバーのスキルを高めるものではなく、またコミュニケーション・スキルを高めるものでもない。学習する組織では、アラインメントという単語を使っている。ベクトルを合わせる、協力体制をつくる、全体として機能するということである。

 チーム学習に取り組むには個人がメンタルモデルに馴染んでおく必要がある。《推論のはしご》と《左側の台詞》である。互いの考え方や感じ方がわかっているチームが一体感をもって相乗効果を高めながら行動することである。

 組織開発では組織、職場、個人との関係をみる。そこで注意すべきことは、チームとしての自律的なまとまりと全体組織としての有機化とをいかに図っていくかである。言い換えれば、部分最適と全体最適をいかに同時に図っていくかである。

 

 

 自己実現(マスタリー)は学習する組織の前提となる。個人が絶え間なく自己の能力を高めていこうとするものである。自己実現をするには、自分のビジョンを明確にすることと現状を明確にとらえる必要がある。このギャップをクリエイティブ・テンションと呼び創造的緊張を生み出す源となるとしている。

 

 組織開発の場合、事業特性や業務特性などを多面で考慮する必要がある。例えば、自己能力を高めていこうとする社員ばかりで組織が構成されているとは限らない。度重なるコストダウンの結果、社員の数は減り、標準的な仕事だけでなく、CADや情報処理などある程度専門的な仕事もアウトソーシングされている。

 そうしたチームまたは部門の管理職は、外部社員に対して指示する制限がある中で、発生する多様な案件に緊急的に対処することに忙殺されている。自分自身もプレイヤーとして専門職として担当案件を処理するという日常である。部下(メンバー)も専門的な業務に没頭しながら、納期に追われている状況である。

 こうした状況の中で、マネージャー或いは担当者が自主的に自己の能力を継続して高めていこうとするのは、物理的にも困難な面がある。そうした中で組織開発は具体的な対策を提供していかないといけない。

 

 

 学習する組織は、組織開発の領域において大きな役割を果たしているが、発表されて20年以上経過する今も、その実現は容易ではない。

 一つヒントがあるとすれば、それは新たな戦略やプロジェクトに取り組むプロセスの中に組織開発アプローチを組み込むこと、自律的な変革システムを遺伝子のように組み込むことである。戦略を共有し実践していくプロセスの中に、学習の仕組み、創造性を開発する仕組みをより自然に組み入れる、組織開発が本来目指したシステムとしてダイナズムを持った組織開発へ発展していかなくてはならないのだ。

 

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